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さすらい

ああ・・・たしかに何も知らなかったよ

教えてもらえる環境にもなかったし

そんな友達もいなかったから・・・

その分、人にとって当たり前のことが

僕には、すべて新鮮で初体験だった

恥もかいたし、逆襲も受けた

そして、それら全てが

僕という人間を形成していったように思う

家の中の孤独

人ごみの中の孤独

社会の孤独

人生はいつも青春

いつも心のさすらい



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posted by わたなべあきお | - | -

オトナ

きみは今、どうしてるかな?

もう母国に帰ってしまったのかな

ご主人の死をインターネットで知ったよ

その世界では有名人だったからね

記事の中に、きみの名も出ていたよ

懐かしいねぇ・・・あのころ

二人とも若かった

いや、僕はホントに幼すぎた

鈍感で未熟者で

なによりも思い遣りに欠けていた

あの時、僕がもうちょっとオトナだったなら

きみを救えたかもしれないのにね28.3.26-1.jpg

posted by わたなべあきお | - | -

ふたり

夕暮れ時、いつもの公園で
きみは待っている
バスを降りてからの小路を
僕は速足で歩く
角が二つあるので
公園からは直接確認できない

時々、僕はいたずらをする
直前の角の手前で木陰に身を隠す
時間厳守のきみは、約束の時間が五分も過ぎれば
心配げに僕を探しに歩き出す

きみが行き過ぎた後
僕は忍び足で公園に行き、ブランコに揺れる
きみが帰ってくる
「えっ!」きみが目を丸くする

事情を察知したきみが
拗ねたふりをして先に歩き出す
僕が追い越して振り向きながらゴメンナサイをする

ふたり
黙って手を握り合って歩き出す
僕は軍隊の行進のように
大きく腕を振り上げる
きみはわざと歩幅をずらして
さっきの仕返しを試みる

そんな・・・ふたり







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私は誰でしょう?

後ろからそっと

目隠しをしましょう

さあ・・・

私はだぁ〜れだ?

えっ!

手のぬくもりと感触で当てたの?

でも、良かったよ

他の人の名前を言われたときのことを考えたら・・・ね

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夢遊病者

「あなたはいつも遠くを見ている」

「わたしの話を聞いていない」

そう言われて我に帰る

きみのことを考えてるんだけどね

男と女の違いなのか

僕だけにある特異性なのか

確かに僕は飛んでいる

夢遊病者と言われても仕方ない

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花のように

時を知って
鮮やかに咲いて
潔く散ってゆくきみたちが羨ましいよ

って言えば
きみたちは怒るだろうな
「それは人間側の主観だろう」ってね

そうかもしれないね
せっかく人間に生まれて
その与えられた役分を果たし切っていないんだものね28.3.22-1.jpg

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罵声を浴びせられても
耐えて怯まず そして決して言い返さず

頬を打たれても
奥歯を噛みしめ そして決して殴り返さず

突き倒されても
上手く受け身をして そして決して睨み返さず

両拳で支えて起ち上がる 起ち上がれ

何事も受けるはそれなりの訳があり
己の裏返しと受け止めて
ひたすらわが心を清め磨くのです

そう言い聞かせ言い聞かせ
湧き上がる憤懣を抑えるのです

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posted by わたなべあきお | - | -

おかあさん

緑の野原にきみを見る
薄紫の山並みにあなたを想う
はるか遠い水平線に亡き人たちの声を聴く

故郷は僕を待ってくれているでしょうか
母の想い出のないあの地は
故郷と言えるでしょうか

目を瞑りましょう
夕日を背に菜を摘む母が見える
腰を伸ばし額の汗を拭う母が見える
坂道で両手を広げて僕を抱き寄せる母が見える
死の淵を彷徨う僕を必死に看護する母が見える

僕はあなたに何をしてあげたのでしょう
存するだけで良かったのでしょうか
さよならも言えずただ泣いてばかりいた僕

ただただ想うこと
その想いを届けること
あの時とは逆に
僕があなたを抱きしめてあげましょう

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夢の迷路

声をかけたけど

きみは振り向かない

きみの前へ行こうとしたけど

透明な壁が行く手を遮る

そうか・・・だから聞こえないのか


壁は奇妙な曲線の集合体で

抜けたと思っても必ずこちらへ戻される

なぜなんだ・・・

僕たちはねじれの位置関係なのか


数学的なものと

哲学的なものとが混在した不思議な世界

僕はとんでもない迷路に入り込んでしまったようだ

ああ・・・

またあの基準点に戻ってきてしまった




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おかあさん

白い野菊 それが おかあさん

かすみ草 それが おかあさん

甘い綿菓子 それが おかあさん

両腕を開いて受け止める それが おかあさん

縁側の陽射し それが おかあさん

柔らかな胸のふくらみ それが おかあさん

頭を優しく撫でる手 それが おかあさん

お風呂の湯気の中 それが おかあさん



自意識があれば 鮮明に覚えていたでしょう

何も覚えがない

あるのは・・・

挫棺の中の

花嫁のような白装束のあ・な・た

三つ子の魂 ここにあり

おかあさん

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posted by わたなべあきお | - | -

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