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不渡り手形の思想家

広津さんから聞く話はいつも何かしらその種のおっとりとしたものばかりだった。

"闘争"とか"鮮烈"、また"秋霜烈日"、"きびしい"、"不惜身命"、"この道一筋"、

"ギリギリ"などなど、日本人の大好きな硬直.玉砕美学の言葉が匂わせるようなものは

どこにも感じられなかった。そのことに私はおどろき、眼を瞪った。

広津さんが私にあたえた最大の印象は、おっとりと、しかし徹底して執拗に持続する

実践の人ということだった。その武器は実証と常識である。正真正銘、広津さんは

行動人であった。けれど明治以来の日本の知識人が〖行動〗という言葉で連想するのは

闇に散る花火の悲愴であった。…………不渡り手形の思想家………

         【開高健】
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散文精神

....それはどんな事があってもめげずに、忍耐強く、執念深く、みだりに悲観もせず、
楽観もせず、生き通して行く精神--それが散文精神だと思います。それは直ぐ得意に
なったりするような、そんなものであってはならない。……この国の薄暗さを見て、直ぐ悲観したり滅入ったりする精神であってはならない。それは何処までも忍耐して行く精神
であります。アンチ文化の跳梁に対して音を上げず、何処までも忍耐して、執念深く生き
通して行こうという精神であります。じっと我慢して冷静に、見なければならないものは
決して見のがさずに、そして見なければならないものに怯えたり、戦慄したり、眼を覆う
たりしないで、何処までもそれを見つめかなら、堪えて生きて行こうという精神であります。

        【広津和郎】

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愛

愛によって幸福であるには、ある種の知恵が必要だ。

愛なしで済ませてゆくにも、やはり一種の知恵が必要だ。

これは同じことである。

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愛とはどういうものか?

あるかなきかのもの……ひとりの女の内にあって一ばん

生き生きした何かしら……

思いもかけぬ風の一そよぎ……

ほとんど見分けがつかないほどの、さりとても

真似のできぬ眼ざしのなかに、浮かんでいる悦びの色。


      【シャルドンヌ】

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程

   みがかないと
   出ないつや
   みがきすぎると
   消えるつや

   これでもか
   これでもか
   という論理と

   そのままに
   そのままに
   という論理と

    【横田 武】
   
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幸.不幸

  貧しさそのものは不幸ではない

  富あるものと比較するとき不幸となる


     【毎田周一】


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溶鉱炉

  世間という溶鉱炉

  混乱迷倒の唯中からも

  玉のようなものが生まれてくる


    【毎田周一】

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回れ右

  

  自分とは、最も身近にいる他人だ。

  自分をもて余すというじゃないか。



       【毎田周一】

………………………………………………………………………………

自分を客観視する自分がいるわけだが、どちらの自分が

本当の自分なのか?

時にその二人の自分は、立場を入れ替わったりもするわけで……

これが高じると、もちろん精神的、心理的な病気なわけだが……

こう書くと、どうも第三の自分が居るらしい。

そこらの裁きは、【天】にお任せしましょう。

心療内科のドアの前で、回れ右しましょう。

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越えて行け

♪教えられるものに 別れをつげて 
 届かないものを 身近に感じて

 分かり合うよりは たしかめ合うことだ
 季節のめぐる中で 今日をたしかめる

 空を飛ぶことよりは 地をはうために
 口を閉ざすんだ 臆病者として

 越えるものはすべて 手さぐりの中で
 見知らぬ旅人に 夢よ多かれ

 越えて行け そこを
 越えて行け それを
……………………………………………

拓郎の八十才のライブコンサートを耳にする

さすがに歳には勝てない部分はあるが、人のことは言えない

ファンも同じく歳を重ねているのだ

青春期の歌詞内容が錆びないのは、不思議な感覚だ

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見えないところで…

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ナニクソ!

◯過度な感傷は重荷だが、感傷のないところには人間味もない。


◯人生の最後の切り札には、何糞!と書いてある。


      【毎田 周一】

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父の恩師は、「ナニクソ先生」と呼ばれた人でした。

松江市長にもなられました。

父の出版した本の序文や推薦文を書いてくださいました。

「何糞」……俗っぽい言葉ですが、核心をついた言葉です。

負けん気、根気、そして慈悲心

人間の器を形成する、欠かせない要素です。

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