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生きる理由

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posted by わたなべあきお | - | -

上.中.下

 ありとあらゆる種類の革命があらゆる名のもとにおこなわれてきたが、どんな革命もついに改変できなかった一つの秩序がある。それは社会の上.中.下という秩序である。上は頑冥さによって生命を失い、中によってひっくりかえされ、中は下の人びとを一時は味方につけると称しておいて行動を起こしながら、一度政権をにぎれば、たちまち昨日の主たる同盟者である下の人間に君臨し、それを支配する。これが革命の原則である。

 人は一つの状態に達すればさらに深く、広く、高い状態を求めようとせずにらはいられず、どんな氷原、あるいは灼熱のごとき教義の氾濫のさなかにあっても、けっし満足するということを知らないのではあるまいか。それを抑圧するのは人民を裏切ることである。

 いずれの社会にも上.中.下が存在し、肥った中者は上者となって、新しきやせた中者、また下者に君臨している。

     自由人の条件 【開高 健】


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posted by わたなべあきお | - | -

胸より胸に

 ひとを愛するということは自分を愛するということから始めなくてはならないのだ。
ひとを愛するということは自分を愛するということなのだ。自分を愛することができない
者がどうしてひとを愛することができようか。ひとを真に愛する者は、自分を真に愛する
者なのだ。

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 涙は、いつか私の頬を伝わり、それは忽ち冬の風に冷えて私の頬を冷たく流れた。涙は
熱いものであるはずだのにこの私だけは冷たい涙を流しているかのようであった。そして
冷たい涙はとめどなく溢れてくるのであった。


      「胸より胸に」 【高見 順】

 
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こゝろ

私はあなたの意見を軽蔑までしなかったけれども、けっして尊敬を払いうる程度にはなれなかった。あなたの考えにはなんらの背景もなかったし、あなたは自分の過去をもつにはあまりに若すぎたからです。私は時々笑った。あなたは物足りなさそうな顔を私にちょいちょい見せた。その極あなたは私の過去を絵巻物のように、あなたの前に展開してくれとせまった。私は心のうちで、はじめてあなたを尊敬した。あなたが無遠慮に私の腹の中から、ある生きたものをつらまえようという決心を見せたからです。私の心臓を立ち割って、暖かく流れる血潮をすすりとろうとしたからです。その時私はまだ生きていた。死ぬのがいやであった。それで他日を約して、あなたの要求をしりぞけてしまった。私は今自分で自分の心臓を破って、その血をあなたの顔に浴びせかけようとしているのです。私の鼓動がとまった時、あなたの胸に新しい命が宿ることができるなら満足です。

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私は冷やかな頭で新しいことを口にするよりも、熟した舌で平凡な説を述べるほうが生きていると信じています。血の力で体が動くからです。言葉が空気に波動を伝えるばかりでなく、もっと強い物にももっと強く働きかけることができるからです。

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            「こゝろ」【夏目漱石】
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こゝろ

先生が私に示した時々の素気ない挨拶や冷淡にみえる動作は、私を遠ざけようとする
不快の表現ではなかったのである。いたましい先生は、自分に近づこうとする人間に
近づくほどの価値のないものだとわからせよという警告を与えたのである。ひとつの
なつかしみに応じない先生は、ひとを軽蔑するまえに、まず自分を軽蔑していたもの
とみえる。

      「こゝろ」【夏目漱石】
   
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言い訳

  〖「出来ない」のではない「しない」のだ〗


  〖「出来ぬ」は「せぬ」なり〗

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やりもしないうちから、出来ません……では、話にならない。

とにかく、やってみろ!………という話

言葉にしなくとも、心の中の呟きも数に入れれば、

闘わずして、負けてしまうケースの如何に多いことか。

一時流行った〖何時やるか?今でしょ!〗と一緒。

1%の確率でも、勝利した例は少なくない。

言い訳する前に、先ずはやってみろ!

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協調と闘争

他人に全く干渉されずに、自分も干渉しないで、しかもお互いの自我のつっぱり合い、

闘争にならないような関係……。

それがどんな音になるのか想像さえ難しいけど。

ほとんどの場合我々人間は、他人と協調するか闘争するか(これも必然的に味方という

ものが想定されているので、協調と同じこと)のどちらかしかできないけどね。


      【坂本龍一】

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不渡り手形の思想家

広津さんから聞く話はいつも何かしらその種のおっとりとしたものばかりだった。

"闘争"とか"鮮烈"、また"秋霜烈日"、"きびしい"、"不惜身命"、"この道一筋"、

"ギリギリ"などなど、日本人の大好きな硬直.玉砕美学の言葉が匂わせるようなものは

どこにも感じられなかった。そのことに私はおどろき、眼を瞪った。

広津さんが私にあたえた最大の印象は、おっとりと、しかし徹底して執拗に持続する

実践の人ということだった。その武器は実証と常識である。正真正銘、広津さんは

行動人であった。けれど明治以来の日本の知識人が〖行動〗という言葉で連想するのは

闇に散る花火の悲愴であった。…………不渡り手形の思想家………

         【開高健】
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散文精神

....それはどんな事があってもめげずに、忍耐強く、執念深く、みだりに悲観もせず、
楽観もせず、生き通して行く精神--それが散文精神だと思います。それは直ぐ得意に
なったりするような、そんなものであってはならない。……この国の薄暗さを見て、直ぐ悲観したり滅入ったりする精神であってはならない。それは何処までも忍耐して行く精神
であります。アンチ文化の跳梁に対して音を上げず、何処までも忍耐して、執念深く生き
通して行こうという精神であります。じっと我慢して冷静に、見なければならないものは
決して見のがさずに、そして見なければならないものに怯えたり、戦慄したり、眼を覆う
たりしないで、何処までもそれを見つめかなら、堪えて生きて行こうという精神であります。

        【広津和郎】

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愛

愛によって幸福であるには、ある種の知恵が必要だ。

愛なしで済ませてゆくにも、やはり一種の知恵が必要だ。

これは同じことである。

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愛とはどういうものか?

あるかなきかのもの……ひとりの女の内にあって一ばん

生き生きした何かしら……

思いもかけぬ風の一そよぎ……

ほとんど見分けがつかないほどの、さりとても

真似のできぬ眼ざしのなかに、浮かんでいる悦びの色。


      【シャルドンヌ】

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