きみはどこでどう俺を見間違えたのだ
もう五年も光を拒絶し
暗闇の中に溶け込んでしまおうかという俺なのに
この真っ暗闇でも
君は俺が見えるというのかい
ほんとうにへばりついてきた
共倒れだぜこの野郎・・・
死滅したはずの過去が
巨大な水滴となって
砂漠と化していた
俺の瞳を濡らした
ただの黒と思っていたのに
その中に
俺は強い生きた黒を見た
澱んでいた色彩が
暗いメロディーを奏で
やがて混沌の心臓そのもののように
強烈なビートで枹が躍り出した
慈愛に満ちあふれた無知なる男
回生の魔力を持った神業師くん
君は黒い宿り木よ
(50年前の作)
「俺たちだって、夢を持って頑張ったときだってあったんだ。
生きるためのテクニックじゃなく、生きるための心を真剣に求めた
ときがあったんだ。
みんなが自由へ、幸福へ、そして愛に満ちた生活を送れるような
世の中を渇望して、革命を起こそうとしたときがあった・・・」
夢を叶えるとは、自分を持つということなんだ。
本当のじぶんとの出会いこそが夢なんだ。
抑えつけようとした大人は、夢を忘れた大人だ。
(小説 人間交差点)
先 生
先生 ぼくは 先生の逆です
ゆうべに願い
あしたに空しく
崩れている自分です
それでいて
どう生きたい願いなのかと
考え考えしている自分です
先生 ぼくは 先生の逆です
ただ じっと待ってなどいられません
待っていれば向こうから歩いてござるなんて
決して決して
僕は追います 何にもなくても追います
追ったら負けだなんて
負けでも いいじゃないですか
先生 ぼくは 先生の逆です
一本の草花 一片の雲 一人一人の横顔一語一語・・・
ぼくにはそれそのものしか感じられません
あらゆる角度の目だなんて
ぼくにはそんな日がいつ来るのでしょう
先生 ぼくは 先生のようにできません
先生は日新にして日進と言われる
さらに月新にして月進でありたいと
先生には一歩退き それでいいのかそれでいいのかと
振り返る余裕がおありだ
ぼくには後ろが見えない
前方から吹き付ける風を
うつむいて こらえるのが精一杯
先生 ぼくは 先生の逆です
それでいい それでいいなんて
さりげなく さりげなくなんて
もっともっと欲しいんです
恋でもなんでも
自分のすべてを燃やしてぶつかるものが
先生 ぼくは なんでも先生の逆です
そこで先生はおっしゃりたいのでしょう
物にも事にも裏表二つの顔があるのだと
わかっているんです 先生のおっしゃることすべて
でもどうしても ああこれが人生なんだと
割り切れない 悟りきれないのです
それこそ本当の負け惜しみのような気がして
こうして何もかも反発しているのです
お許しください 先生
(50年前の手作り詩集)