人間は肉体があるゆえ経済関係をまぬがれぬのである。どんな宗教家でも、肉体を
もつ限り、経済関係から離れられない。いかに高僧聖僧といえども、人から捧げられ
たものを食わせてもらうのだから人一倍感謝の念が深くなくてはならぬ。もしこの点
を忘れたら、一瞬にして堕地獄である。
森 信三
人生の晩年は、あくまでも積極的に! 非常に誤解のあるコトバですが、
ハッタリの一・二歩手前まで出てゆくくらいの積極性をもつ必要がある。
気魄というだけでは、まだキレイ事に過ぎて、少々物足りないのです。
気魄とハッタリの中間を、素っ裸で突き抜けるというくらいでないと、
今日の時代では流されてしまう。
森 信三
書いてさえ虚しいのに、書かなかったら、もっと虚しい。つまり虚しさも感じない
ほどにむなしい晩年になる。自分の書いたものを、いつまでも握って出さずにいる
と、精神的な便秘になる。それ故次への展開がきかない。ところが出すとかえって
執着がなくなる。だから思い切って出すんですね。たとえ人からどう言われようと
かまわぬじゃありませんか。結局は自己の執着を断つために出すんですから・・。
森 信三
文明とは交流であります。
交流によって日本人はできあがった。
外来のものに受容力があったのです。
日本は一種の、国内的国際訓練を受け続けた国です。
外来のものに受容力があり、賢く選択し、見抜くことができる民族です。
司馬遼太郎(講演録)
「アメリカの旅の話に戻りますと、私にはなんだかアメリカ人がさびしそうに見えま
した。たしかに偉大なアメリカ文明はある。しかし、われわれのように、文化をもっ
ていない。そのため心が安らかにならないのではないか。
文明は合理的なものですが、文化は非常に非合理的です。その非合理性が心を安ら
かにさせる。」
司馬遼太郎・講演録