私の両親は、いわば対になったブックエンドようなものだったと言っていい。
中身がどんなものなのか考えようともせず、必死になって左右から押さえ込み、
表面を取り繕ろうための努力を惜しまない。本が逆さまにならないように、棚から
落ちてしまわないように、彼らは気を配り続けた。そして私は、おかしな言い方に
なるが、そんなブックエンドにはさまれて育った一冊の本だった…。
【小池真理子「恋」】
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状況を引用して、自分に当てはめてみたら、僕は父の書斎の中の膨大な量の本たちの
なかで、引き出されることもなく積み重ねられた本たちの中に挟まれた、一枚の
メモ用紙的存在だったのかも知れない。僕自身が何かに書き残している。
「そこに家は存在していたが、家庭がなかった…」事実、ごく稀に立ち寄っても、
僕自身の部屋というものは存在しなかった。もし、帰ってきた時のために…という
思い遣りも無かったというわけだ。
人生はそう簡単には括れない。
すべて、人が通りすぎてきたことは必然だったと考えるしかない。
私自身が通りすぎてきた過去が、どうあがいても避けることのできない
必然のからくりの中にあったのと同じように。
【小池真理子「沈黙のひと」】
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タイムスリップして、過去のあの一瞬に帰れたとしても
それから先すべてを変更することはできないはずだ。
何事も起こるべくして起こった必然事だったのだ。
変えられるとしたら、これから先の未来だ。
逆転サヨナラ満塁ホームランなんて夢見ないで
僕はデッドボールを選択する自分が見える。
鮮やかな身のこなしで、投手も捕手も、そして
アンパイヤまでも騙して…