仕事で訪問するお家の半分以上が、介護問題を抱えている。
しかも介護するご本人も高齢者というわけだ。
外見上、大きなお屋敷なのに、一歩中へ入れば「えっ!」と思うような
状況が珍しくない。
施設へ入れれば、結構な話と思いきや、お金の問題がついて回る。
いきおい大概は自宅介護ということになってしまう〜この現実。
加えて、痴呆や寝たきりともなれば、家族の負担ははかり知れない。
「夏はなんとか我慢できたけど、寒くなってきてお湯が・・・」
こんなお客さんが続いている。
商売上、こちらサイドでは高額とも思えない数字が、すっと出せない自分が
もどかしい。
なかなか・・・ドライになれないんだよな。
大きな組織の会社は、びっくりするような数字を出しているけれど・・・。
誰もいなくなったスナックで
照明も落とした客席で
僕は独り夢の中に居た
そこに聞きなれたイントロが流れ出した
頼んでもいないのに・・・
「♪そこにあるから追いかけて 行けばはかない逃げ水の・・・」
僕はフラフラと立ち上がり歌い出していた
「♪そんな風な生き方が 幸せに近い」
「♪ラララ ラララ ・・・」
薄ぼんやりとした空間に君の笑顔を見たような気がした
二曲目が始まった
ママ・・・よく覚えてるよね〜僕の歌う歌
「♪好きな誰かを想い続ける・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それからどうしたのか
思い出せないんだ
台に上がり、首をロープに通そうとしたその時、チャイムが鳴った。
運命のチャイムだった。
二人を見た時、石神の身体を何かが貫いた。
何という綺麗な目をした母娘だろうとと思った。それまで彼は、何かの美しさに見とれたり感動したことがなかった。
花岡母娘と出会ってから、石神の生活は一変した。自殺願望は消え去り、生きる喜びを得た。
あの母娘を助けるのは、石神としては当然のことだった。彼女たちがいなければ、今の自分もないのだ。身代わりになるわけではない。これは恩返しだと考えていた。彼女たちは身に何の覚えもないだろう。それでいい、人は時に、健気に生きているだけで、誰かを救っていることがある。
「容疑者Xの献身」(東野圭吾)
僕は思う・・・
素顔のきみに惹かれた
飾らないきみが好きだった
でも・・・ある時から急に
きみに変化が起こった
当然の女性心理と言えばそれまでだろう
化粧と華やかなファッションに
きみの素顔は隠されてしまった
きみの思惑とは裏腹に
きみとの距離が生まれたことを実感した
素顔とは・・・
きみの心の素直さだと
今でも思っている
心を飾れば本質が消えて行く
「法律に触れるという意味じゃそうだがな」
照明の落とす影が、猛禽のような義父の目鼻立ちを一段と鋭く見せていた。それでいて、義父はとてもくつろいでいるように見えた。とても親しく見えた。
一瞬、私はぞっとした。
義父の表情は語っていた。法に触れこそしないものの、私はもっともっと凄いことをやってきたよ。裏切りも企みも、駆け引きも暗闘も、収奪も秘匿も。
人間はそういうものだ。必要に迫られれば何でもやるんだ。義父はひとかけらの粉飾もなく、私にそう言っているのだ。問題は、それを背負っていかれるかどうかだけだ、と。
「誰か somebody」(宮部みゆき)
僕は思った・・・