半世紀以上も前の記憶をベースにして、面影を追いかけているなんて、滑稽極まりなく笑いもんだろう。己れを鏡で見れば、否応なしに分かろうというもんだ。遠い昔のあの頃、描いていた夢や希望が、当時のものとは全く別物に変化したことを、当時の僕が知る由もない。お人好しと言えば、そうとも言えるし、鈍感男と言われれば、それを自認するしかない。儚い夢追い人というわけだ。
再会場面を想定する。僕はあの頃のままの僕なのに、貴女は、君は、とんでもなく別人だ。逆に僕自身もそう映っているのだろうか。こんだけ変わんないと思っているのに。人生の書き換えは出来やしない。双六ゲームのように、振り出しに戻って再出発なんて出来やしない。タイムトンネルでもないかぎり。
夢の中で、じゃんけんを求めた君は、まるで幼子のような自然な笑顔だった。何のためのじゃんけんだったのか、確かめもせずに僕はパーを出していた。負けると確信して、君を勝たせようとして、そして君の要求を丸々受け入れようとして。でも君は違った。後出しじゃんけんで!君はグーをだしたのだ。僕の心が読まれたのか、明らかに意図的な負けのじゃんけんだった。あり得ないと思った。なぜ?と思った。それが貴女の最大限の優しさだったと気付くのに、僕は随分と時を要した。そんな愛情表現もあるのかと涙した。