本来、悦びは無意識のうちに、心の中から湧き上がってくるものだろう。
しかし残念ながら、自力で掴んだものと勘違いをして、本心からの悦びを持て
ない人は、この世にはわんさかといる。そしてその傲慢さは、図らずも顔にでる。
こればかりは何としても隠せない、見えてしまう。
ちょっと角度は違うが、昔ブラックな世界に身を置いていた人が、僕の職場に
就職してきた。かなりの技術者で、会社にとっては大きな戦力となったわけだが、
僕が訳アリで退職した時、彼も一緒に職場を離れ、僕と一緒に共同で事業展開を
することになった。その彼が酒を飲んでいる時に、真剣に言った。
「ナベちゃんは、穏やかな顔してるなあ・・・俺は詳しいことは言えないけど、
ちょっと危ない世界に身を置いていたから、そのころのツケで人相が変わって
しまったんだ。毎晩鏡を見ては、眉毛の両端を押し下げてるんだけど、なかなか
なあ・・・」としみじみと呟いた。
僕は正直どう答えていいか分からなかった。顔相にしろ手相にしろ、そう簡単
には変わるものではないだろう。住む世界を変えたからと言って、真っ新で
やり直せるわけでもない。常に何かしらの影が付きまとっている。数年で袂を
分けたわけだが、単身でやり抜くことができたのだろうか?
他人事ではない、僕には僕なりの悩みがあった。丸さ、優しさだけではクリア
できない現実の厳しさが突き付けられてきたのだ。だれかが冗談半分に言った。
「やっぱり、ナベちゃんは学校の先生になるべきだったな。商売人はムリ!」
ウソがつけない、ハッタリがきかない、冒険心がない、・・・ない、・・・ない
ないない尽くしの人生行路。それでも僕は歩いてゆく。
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