背景の記憶(314)

    夜逃げ

YouCubeで「夜逃げ屋本舗」という映画を観た。中村雅俊と大竹しのぶが出ていた。

「夜逃げ」と聞いて思い出すことがある。

あれは・・・二十歳前のころ、宣教師の卵として、広島市の原爆ドームの近くに

アパート一間をあてがわれ、開拓布教なるものに投げ出された。まさに一文無し、

水道の水だけが命の綱?だった。それでなくても細身の体が、どんどんやせ細って

行った。一月ほど経ったある日、ある家族との出会いがあり、初の成功事例に辿り

つけたかという感じだった。

しかし急転直下、何回か目の訪問の日、奥さんから想像もしないことを頼まれた。

「わたなべ君、クルマの運転できるでしょ?今晩頼める?」何のことか理解できず

にいると、どんどんと部屋の片づけが始まり、引っ越し???そういうことかと

理解して、荷造りを手伝うことになってしまった。しかしなんとまた急に?と

怪訝な顔をした僕に、奥さんから、ご主人の事業が失敗して夜逃げをしなければな

らなくなったと告げられた。まだ幼稚園くらいの男の子もいた。

 まさに文字通り「夜逃げ」・・・暗くなるのを待って、必要最小限の荷物を載せ

て、言われるがまま車を走らせた。10キロくらい走っただろうか、目的の民家に

到着して、その晩は電気こたつに足を突っ込んで四人で雑魚寝した。

 事が事だけに、僕は何も言えなかった。暗闇の中で天井を見つめる奥さんの瞳に

光るものがあった・・・。

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posted by わたなべあきお | comments (0) | trackbacks (0)

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