友へ

純一君、君はある種の裏社会に生きてしまったことは否めない。あえて「ある種」と言ったのは、僕の皮肉だ。表向きは全うだと言えるだろう。その種の人たちは山ほど居るからね。しかも堂々と大きな面をして。仮面とまでは言わないが、大衆、民衆を上から目線で見下して、巧みな言葉で操り信じこませるという、教科書通りの操り術だ。

でも君は、どこかの時点で気付いていたんじゃないのかい?しかし、その時にはもう家族も居ただろうし、役職上でもそれなりの位置にいた。ということは、君は本心に偽り仮面を被ってしまったわけだ。

 自慢じゃないけど、逆に僕は、大海に投げ出された木の葉舟のような五年間を送っていたさ。意図的にというほど、カッコいいものではなかったけれど、金に変えられない貴重な宝物を得たと自負している。

 「人間の価値は正義感」同じ価値観を植え付けられたはずだ。その監視眼を自らに向けることは出来なかったのかな?己を偽り、他人にはまことしやかに押し付ける。心的詐欺師の典型だと僕は確信する。

 極論すれば、この世は騙し騙されの複雑な絡み合いだ。その混沌のなかで、如何に己を見失わないかの闘いだ。「爪上の土」という言葉がある。爪の上に土を乗せてみて、どれだけの土が残るのか?これは、究極の結果論だ。この世で生存中に判る話ではない。

 この世の終わり、つまり我が身の臨終の時に、その答は出る。歴然と、まざまざと。

24.10.30-1.jpg

posted by わたなべあきお | comments (0) | trackbacks (0)

コメント

コメントフォーム

トラックバック


▲page top