大津の宿を出るとき、女将がちょっと不思議そうな眼差しを向けてきた。どんな二人に見えたのだろうか?歳の差は勿論のこと、第一風体からして二人は違い過ぎた。彼女はこざっぱりとしたスーツスタイルだし、片や僕はヨレヨレのジーパンスタイルだ。どう見ても釣り合わない。彼女はそんなことお構いなしとでも言うように、テキパキと勘定を済ませ、駅に向かうタクシーに乗り込んだ。
京都駅で新幹線に乗り換えて、いよいよ博多へと向かった。この時、僕の心はまだ落ち着かなかった。つい二年前、松江から京都への逃避行(宗教施設からの脱出)を思い出していたのだ。安来を抜けて米子を過ぎた時、やっと心の落ち着きを取り戻したのだった。あの時と同じ感覚だった。別に叔母が追いかけて来るわけでもないのに、心はそれに近い心境だった。神戸を過ぎた頃、やっと僕の心は落ち着きを取り戻していた。
彼女を横目で伺うと、いかにも安心と言う感じで落ち着き払って外の景色を眺めていた。その表情からは「大丈夫!私に任せておきなさい!」とで言いたげな雰囲気で、心がどっしりと構えているという感じだった。僕の視線に気づいて、彼女が僕の方を向き無言で「何?」という顔をした。僕は見透かされた感じがして、ちょっと照れ笑いをしてこう言った。「何にも無いんだけど・・・お金も、着るものも・・・」彼女は今度は言葉に出して「大丈夫!ノープロブレム!」と言った。
男のプライドも何もなく、全ては彼女にお任せで、僕はまさに大船に乗った気持ちで眠りに落ちて行った。
、