二十歳の頃、叔父の仕事を手伝っていた。
港湾建設のハードな仕事の中、事務兼現場監督兼・・・要するに
何でもさせられていた。
季節労務者の人たちには「あきちゃん」と可愛がってもらった。
飯場のおばさんにも実の子のように接してもらった。
鹿児島出身のひとたちの焼酎に付き合わされ
ほろ酔いで波止場に寝転がって星空を見るのが
唯一の自分の時間だった。
ある時、社長の叔父に言われた・・・
「おまえは<世捨て人>みたいな奴やな」と。
反論するわけでもなく、僕はだまりこくっていた。
そして別れた彼女の言葉を反芻していた。
「あなたはいつも何処か遠くを見ている・・・」