<人間の味>というものは、年を重ねる毎に増して行く。
僕が当時の彼女に誘われて観に行った映画が「卒業」だった。
当時、僕はダスティン・ホフマン演じる男と同世代だった。
映画に誘った彼女は、僕より5才年上だったわけだが、その中身に自らの想いを代弁させたのかもしれない。でも、これは随分と時を経てから思い至ったことだ。
今も思い出す残像としては、黒い下着や、教会の窓を叩いて彼女の名を叫ぶ姿や、S&Gの音楽だ。
その作品を介して、僕に彼女がどこまで語ろうとしたのかは、後々になって気付いたことである。
今日、はるか時を数えて、ダスティン・ホフマン(&エマ・トンプソン)主演の映画を観た。
数々の経験を経た人間でなければ、語れない言葉がある。仕草や表情もある。
ありのままの自分を、そのまま曝け出せる相手は、そうざらにはいない。
ましてや、ともにそれを認め合える相手ともなれば・・・。
どんなに挫折を経験しようが、年を重ねていようが、そういう対象者に巡り会えた人は、世界一の幸せ者と言っていいだろう。