寄りかかってしまえば、そのまま安住の生活が待っていた。裸一貫でも何とかなる〜そんな時代でもあった。思ってくれて養ってもくれる〜そんな年上の女性がいた。わざわざ博多から京都まで迎えに来てくれて、列車に乗りさえすれば、そこから新しい生活が始まる・・・段取りだった。彼女のシナリオでは・・・。
でも、僕の答えはノーだった。ギリギリの選択。僕は22才、彼女27才。
「どうして、いつもそうして・・・苦しい方ばかり選ぶの?」
どうして?と言われても分からない。自分の中の何かがそうさせる。すぐそこに母のような温もりがあるのに・・・とろけるような安らぎがあるのに・・・。
まさしく「22才の別れ」
♪あなたにサヨナラって言えるのは今日だけ
明日になってまたあなたのあたたかい手に
触れたらきっと言えなくなってしまう
そんな気がして・・・・
自分でも恐ろしくなった・・・<心的テクニック>との訣別。
翌年・・・
姓の代わった彼女から暑中見舞いが届いた。
相変わらずの流れるような達筆で
個人的感情を押し殺した様な葉書だった。
住所には番地は書かれていなかった。