背景の記憶(97)

誰とは言わず

みんな心を病んでいる

ある地方都市で詩人としての地位を確立した彼女も同じだ

「昼の明るさの中では 無心を装っても

夜の暗さの中では 身を縮め震えながら

点滴のように流れ打つ

時計の音を数える」

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そんな彼女と同窓会で隣席となり

同病というのか?

相通じるものがあり

廻りの者には意味不明の会話が

二人の間では

互いの救いの泉のように弾んだ


誰もが羨むほど

明らかに跳んでいた彼女

誰もが訝るほど

心に壁を立てていた僕


一見

かけ離れた心象が

微妙な細い糸で繋がっていたのかも知れない

その絆ともいえるものは

この年になっても

年賀状の短い自筆の言葉に見え隠れする

posted by わたなべあきお | - | -

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