小説の作者とはまったくの同世代だから、当たり前と言えば当たり前なのだが、作品の中の時代背景や登場人物や固有名詞やストーリーの展開が、自分の歩んできた幼少期から青年期の道程とあまりに酷似していて、文庫本6冊の中に引きこまれていった。
一歳半の母の記憶⇔僕はちょうど三歳の時の母の残像。
小学生の奇妙な女友達⇔僕には奇妙ではないが鮮明な思い出。
父と自分のかかわり⇔僕もくっついて生きるしかなかった。
宗教性⇔これはもっとも比重が重い。いい意味でも悪い意味でも。
学力、優しさ、包容力、弱きを助ける⇔彼には劣るが質的には同じだ。
ミックジャガー、「ミクロの決死隊」⇔同時代を生きた証。
逃亡、脱出、追手⇔体験した者にしか分からない極限。
暴力、自殺⇔家庭内不和、自殺未遂(僕ではないが・・・)
報復、復讐⇔法に触れないギリギリの反撃。
痴呆、療養施設⇔まったく同じ状況だ。
昏睡者への語りかけ⇔魂〜核の部分が聞いている(体験済み)。
何事にも<裏と表>がある。それは紙一重だ。
<善と悪>と言ってもいい。
<良心と邪心>と言ってもいい。
誰もが持ち合わせている両極・・・どちらが攻め勝つか?
一個の人間の中で、その闘いは延々と続くのだ。