日中の春の日射しは眩しく
ここ数日の陽気で
あちこちの桜も一気に開花し始めた。
でも
夕暮れ時のビルの谷間を抜ける風は冷たく
コートを忘れたことが悔やまれるくらいだ。
夕方の病院ロビーは
閑散としていてうら寂しく
白衣の人たちの歩調も
なんとなく落ち着いて見える。
エレベーターにぽつんと独り
鏡に映る男に
おれはこんな顔をしてるのか
・・・とつぶやく。
病室に向かう廊下でも
すれちがう人はいない。
新生児室から
か弱い泣き声がもれてくる。
六人部屋の
四つのベッドは空きで
二人だけのネームプレートが淋しげだ。
オゥ〜ともヤァともつかない
声をかけて
僕は娘とぎこちない
ハイタッチをする。