背景の記憶(126)

尚子 「あたしたち、ヘンな時に逢っちゃったのね」

菊男 「・・・・・・」

尚子 「さよなら」

 尚子、手を出す。菊男、握手。尚子、離さない。

尚子 「もう少し、こうしててもいい?」

菊男 「手が汚れてるよ」

尚子 「(いいの)青春の思い出って、これひとつなんだもの」

 スナックの照明暗くなり、また明るくなる。

尚子 「青春て、どして青い春って書くのかな」

菊男 「・・・・・」


                    「冬の運動会」 向田邦子

posted by わたなべあきお | - | -

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