父は国語の教師だった
書道家だった
俳人だった
そして何より
詩人だった
躾らしい躾は受けた記憶がない
みんな文章化されたものだった
◯返事はハイッ!と元気よく
◯挨拶は人より先に
◯履き物を揃える
新聞紙を丸めて「面! スキあり!」とやられた
カナヅチを直そうと、海に放り投げられた
小学校の夏休みの日記帳に…
飛行機が白い煙を吐いて
みごとに空を真っ二つに割った…
と書いたら、「日記はその日にしたことを書きなさい」と赤ペンで
書かれていた。「だけど、これはイイ」とも。
父は妻(亡母)に恋をしていた…
永遠の恋をしていた…
だから、母が亡くなった時は、男泣きに泣いたらしい。
僕はまだ三才になった明くる日のことだから、何も知らない。
何も覚えていない。
(心の空洞)とは、このことを言うのだろう。
ぽっかりと無色透明の穴が僕の心を支配している。
その穴に色づけを試み、代替を求めたが、何一つ成就しなかった。
仮の宿…仮の部屋…仮の空間…
そして自ずと天空へと眼差しは移ろいゆく。
