ブックエンド

私の両親は、いわば対になったブックエンドようなものだったと言っていい。

中身がどんなものなのか考えようともせず、必死になって左右から押さえ込み、

表面を取り繕ろうための努力を惜しまない。本が逆さまにならないように、棚から

落ちてしまわないように、彼らは気を配り続けた。そして私は、おかしな言い方に

なるが、そんなブックエンドにはさまれて育った一冊の本だった…。

         
         【小池真理子「恋」】


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状況を引用して、自分に当てはめてみたら、僕は父の書斎の中の膨大な量の本たちの

なかで、引き出されることもなく積み重ねられた本たちの中に挟まれた、一枚の

メモ用紙的存在だったのかも知れない。僕自身が何かに書き残している。

「そこに家は存在していたが、家庭がなかった…」事実、ごく稀に立ち寄っても、

僕自身の部屋というものは存在しなかった。もし、帰ってきた時のために…という

思い遣りも無かったというわけだ。

posted by わたなべあきお | - | -

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