形見

たいていのことは我慢してきた。

わがままを言ったり、利己的になったり、

人を傷つけたり、感情の起伏を人に見せたり、

いたずらに逆らったりせず、

できるだけにこやかに、温厚に、

他者とぶつからないように生きてきた。

それがおかれた立場の最善の処世術であるかのように。

自意識が芽生えたころには、継母がそばにいた。

しかし僕の心の中までは、決して入ってはこなかった。

裏を返せば、僕は幼くして鎧を身につけていたことになる。

それは自らが身につけたわけではなく、

実母が形見のように着せかけたものだっのだ。

posted by わたなべあきお | - | -

▲page top