霙になりそうな冷たい雨の中を
僕は傘もささずに歩いていた
はるか北山の樹々は
うっすらと雪化粧している
もうすぐそこへ行くよとでも言うように
常緑の葉を雪化粧に代え鋏さ色の風が舞う
はやくお家へ帰りなさいよと
急かすように
寒風の中では寒すぎる格好の老婆が
アスファルトにへばりついた落葉を
懸命に素手でつかみ取ろうとしている
僕がやりましょう
金鋏を持った僕は
淡々と濡れ落ち葉を掴み取る
それはそれでキリのない行為なのだが
そうせずにはおれないほどの
老婆の腰の曲がり具合なのだ
齢の主は
その速度を緩めようとはしない
むしろ鞭打つようにテンポを速める
老婆とは言うが
僕とそんなに歳の差はない
なんだ?この距離感は?
