忘れしゃんすな
テレビに映し出される港風景、何気なく観てしまうが、僕にはそれなりの感傷も
ある。僕が幼いころ、生まれ故郷の隠岐の島は、まだまだ岸壁施設が整ってはおら
ず、大型船は湾に入ってくると、その真ん中あたりで停まり、陸から迎えの手漕ぎ
船が行って、客と荷物を降ろすという状態だった。父のすぐ下の弟の叔父さんが、
その回漕店を営んでいて、僕の兄も一時期お世話になった。
昼間や海が凪いでいる時は、ちょっとした風物詩的趣があったのだが、深夜や時
化の時はかなりの難行であったようだ。稀に人や荷物が海中に落ちてしまったとい
う話も聞いたことがある。夜中着の場合は、湾に入ってきたところでボーー!と
汽笛が鳴って、仮寝の布団から抜け出して作業に取り掛かると聞かされた。
そうした時代の十数年後、僕自身がそれに関連した波止場づくりの仕事で帰郷
するとは思いもしなかった。これも縁というものだろう。超大型船ですら接岸できる
ほどに整った港町に、もう昔の面影はない。船が離れるとき、隠岐民謡の「しげさ
節」が流れ、別れのテープが舞う光景は、昔では考えられないことだ。
♪忘れしゃんすな 西郷の港 港の帆影が 主さん恋しいと 泣いている・・・
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