生まれ故郷の坂道・・・
沢蟹の這う石垣
いつも澄んでいる湧水の水汲み場
竹や雑木や柿木のトンネル
やっと辿り着いて振り向けば
パッと開けた入り江の景色
松江の実家の坂道・・・
家出して一度も住まなかった家
あるべき勉強部屋もなく
南ケ丘の地名も虚ろに響く
心と同じ中途半端な高台
日吉ケ丘の坂道・・・
バイト帰り
ジーパンの前ポケットに親指をひっかけて
咥えたばこでコツコツと歩いた坂道
安アパートに帰り着き
電気も点けず西の窓を開ければ
はるかにそそり立つ京都タワー
薬師山の坂道・・・
舗装されてなかった地道が懐かしい
覆いかぶさるような竹林
筍堀やクワガタ採りが楽しかった
雪の朝、坂道だけでも
チェーンを巻かないと下りられなかった
恩人に付き添って救急車で下りた坂
二度と帰らぬ人を待つ邸宅
気が付けば
住み続けているのは僕だけ
真東の比叡の山々が友達だ
そしていま・・・
漠然と・・・
次の坂道を思い描いている