貧乏〜背景の記憶(255)

 小学校時代、総じてみんな貧乏だった。もちろん〜イイ所の子も何人かはいたが、それが羨ましいという時代でもなかった。そんな中でも極端にみすぼらしい子もいたわけで、当然ながら皆から遠ざけられるようになり、やがて登校拒否になりで、先生にしたら悩みの種であったに違いない。

 そんな時先生が「わたなべ・・・〇〇君の家へ様子見に行ってくれ。あまり強引なことは言うなよ。」四年生の僕には、これはやさしいようでかなり難しい課題だった。坂道の中腹にある屋根に石が乗った平屋で、壁はトタン張りだった。ギシギシの引き戸を開けて、暗い部屋内に向かって、「こんにちは〜・・・」と恐る恐る声を発した。返事がない代わりにお母さんらしき女性がヌ〜っと現れた。

 僕はちょっとビックリして、咄嗟には声が出なかった。やっとの思いで「あの〜・・・〇〇クン、居ますか?」と切り出した。「居ますけど何か?」と言われるとその先が続かない。お母さんも普通ではない身なりだったので、僕は怖気ついてしまった。「また学校に来るように言ってください」とだけ言い残して僕は急いで家を後にしてしまった。

 先生にはありのままを報告したけど、何の役にも立てなかった自分が情けなかった。もっと言い方があったんじゃないか?直接顔を合わせるべきだったんじゃないか?心のどこかにへんな優越感めいたものがある自分がとても嫌だった。

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posted by わたなべあきお | - | -

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