波間

遠い昔を思い出してみれば

汽船なんかで送ると

全く遠い別れのようが気がして

涙ぐんだりした

テープも切れて

顔も薄ぼんやりとしか見えなくて

もう声も届かない

辺りもはばからず大声を出せばいいのに

気恥ずかしさに負けて

僕は黙って両の手を振り続けた

入り江を抜けて

船首を立て直して速力を増した時

これがほんとの別離なんだと打ちのめされた

もう君は・・・船室に入ってしまっただろうか

僕のなかの恋慕が羽を付けて追いかけていった

そして半分も行かぬ間に

力尽きて波間に消えた

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posted by わたなべあきお | - | -

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