海は「生み」の別名

人は驚くが、北海道には九十超えてなお、昆布漁に出ている現役漁師がいる。

というのが菊次の定番の言葉だった。

九十まで船に乗るのだと言い、人は肉体で老いるのではなく、心で老いるのだとい

うのが持論である。



何もないところから人間が一人この世に現われるなんて。

女は皆、腹の中に命を生み出し育む海を抱えているのか。

海は「生み」の別名なのかもしれぬと、一歩は思うのだ。

中学生の頃、作文に書いた内容が、今はもっと実感として胸にある。



              井沢  満 「わが家」

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posted by わたなべあきお | - | -

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