背景の記憶(88)

故郷の夏の夜

戸と言う戸はすべて開けっ放し

八帖分の蚊帳を吊って

すばやく中へもぐり込む


ランプも消されると

月の灯りが異様に明るい

獲物を失った蚊たちが

蚊帳の外でブンブンとうるさい


寝付かれず

中庭に出てみれば

頭上は満天の星空

空気は澄み

星たちは手が届くかのように近い


イカ釣り船の船団だろうか

水平線のある一角が異常に明るい


小学生の僕は

まだ何にも分っちゃいなかった

身の回りで起こっていることなんか・・・

23.8.13風鈴.jpg

posted by わたなべあきお | - | -

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