背景の記憶(80)

夢を見た・・・。戦場跡のような場所で、僕は案内係をしていた。

黒っぽい帽子を深く被り、表面だけ笑顔をつくり事務的に役をこなしていた。

周回型の列車の中・・・

ある団体が乗り込んできた。見覚えのある顔が近づいてきた。

K君、B君、T君・・・高校時代のクラスメートだ。それも2回生時の・・・。

不思議なことに、彼らはみな詰襟の学生服姿だ。

「やぁ〜久しぶり」誰彼となく声をかけられた。

僕はどう応えていいか分らず、いつものピエロのような笑顔で誤魔化した。



そうだな・・・これは45年前のあの時と同じシチュエーションだ。

どこか突き放したような目線。

でも何かを探り当てたい好奇の眼差し。23.2.21ハコベ.jpg

彼らは所謂優等生たちだった。

先生にも勝る頭脳の持主もいた。

僕は、困ったことに・・・どういうわけかその集団に組み込まれていた。

共学でありながら、男性だけのトップ50にぶら下がっていた。

具体的目標をしっかり持ち、確実に突き進んで行く集団だった。


そんな中で・・・

僕は意識的に、落ちこぼれていった。

負け惜しみではなく、まさに意識的に・・・。

僕の心は彷徨っていた。とんでもない世界を彷徨っていた。

今思えば、心的病気だったのだろう。

そういう奴ほど、自分は正しいと、狂ってないと思うものだというから・・。



中途半端な空気のなか、彼らは列車を降りて行った。

最後にひとりだけ、心からの笑顔を見せて去って行ったやつがいた。

よく見ると・・・

その人は3回生の時の担任の先生だった。

高校時代の最大の理解者。

posted by わたなべあきお | - | -

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