背景の記憶(127)

脱出はある種の快感でもあったのだが
裏切りと紙一重のところがあって
逃亡ととられても仕方がなかったわけで・・・。

組織は社会の縮図でもあり
あらゆる角度から監視の目が光っていたわけで・・・。

テレビドラマ的なスリルは
毛を逆立たせ、喉をカラカラにした。

列車に乗り込んで座席に座っても
後ろのドアが開く度に
心臓の音を感じた。

遠ざかる見慣れた景色
やがて飛び込んでくる見慣れない景色
そのひとコマひとコマに
事の重大さを突きつけられているように感じた。

そして、行き先を掴まれたのは
意外にも鉄道のチッキであった。
犯罪者なら、一巻の終わりというわけだ。

二十歳そこそこの若輩者の
無謀とも言える脱出劇
シナリオ的には、申し分のない出だしであったのだが・・・。

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posted by わたなべあきお | - | -

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