愛児夢限

  愛児夢限

バーミリオンに灼けた
地平の一本道を
ちっちゃい頭が
ひとりぼっち
とぼとぼと
消えていったよ


  成 長

身体に備わった
支配力の喜びに
幼児はずんずん
石垣を登っていくのだ



  昼の暗きを

麦秋近く 吾児逝く
 
陽は輝きて 日もすがら

昼の暗きを いかにせむ




  断 章

愛児の死など
忘れさせてしまうような
暑さであった

いずこの日とも思われず
日が照り
蝉が鳴いていた

それなら

一体

誰に

語り明かす

相手が

あるというのか


おもかげを索めてつきず蝉の声


(父・渡部一夫  遺作)  ※姉・成子 八月十一日命日

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posted by わたなべあきお | - | -

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