僕は、作中の維朔こと作者と京都で遭遇していたのかも知れない。
まさに同時代を生きていた。
教師だった父からの個人的教育(英語の原書を読め)(多読、速読)、
白紙答案の受験、ロックバンド・村八分、大丸(週給,万引き)や染め工場での
バイト、西陣界隈の諸々(パチンコ,ストリップ,五番町・・・)
橋の下こそなかったが、寝袋一つの放浪
喫茶店やジャズスポット
ギター、ピアノ、音響・・・
そして何よりも、行くところ行くところでの、女性との関わり
彼ほどのどぎつさ、えげつなさはないにしろ
心的にはかなりの部分で共通項を見出す。
分かっていながら、突き進まねばならなかった青い性
意外なくらいに踏みとどまる内的抑制
そして何よりも・・・
テクニックと化した人的操縦術への嫌悪
それが僕の「卒業」だったのかもしれない。
「百万遍 古都恋情」 花村萬月