わたなべあきおWeb

みやこ暮らし(1)

 失恋の傷も癒え、いや実は(結果としての)ただ働きの三年間を終え、僕は京都に帰ってきた。嘗てのアルバイト仲間だったH君に前もって連絡を入れておき、小さなアパートを借りてもらっていたのだ。その敷金と礼金で、僕の全財産は消えた。

 アパートはH高校のすぐ近くで、道路側からは二階建、裏へ回ると三階建というヒョロッとした建物だった。僕の部屋は三階で、窓からは真西に京都タワーの雄姿を眺めることができた。(うん、これはイイ部屋だ!)独りごとを言うと、H君が「なっ!だろう!」と誇らしげに答えた。そして僕の顔色を窺うように言った。「オレも・・・一緒に・・・住んで・・・いいかな?」「ああ、もちろんOKさ!」僕は即答した。財布の中身事情もあったが、やはり何より語り合う友が欲しかったのだ。

 H君はアパートのある町の隣町に住んでいた。深くは聞かなかったが、何か訳ありの様子で、家を出たい状況にあったようだ。「バイト〜せなアカンやろ?」「うん・・・」「紹介〜頼んでおいたから・・・」「おっ、それはまた手回しのいいことで・・・サンキュー!」「一週間くらいで返事が来ると思うんや。簡単な履歴書書いといて」「了解!」「今夜はおれのおごりやから」H君は僕を夜の街へ連れ出した。

(Update : 2010/04/22)