背景の記憶(74)
♪青臭い奴だと 笑わば笑うがいい 僕らの汗は 僕らだけの勲章さ 小さな肩をかすめた 大きな怒りよ もっともっと激しく 土の上を転がれ あゝ時代は僕らに 雨を降らしてる
(長淵 剛)
ブリージーンズの前ポケットに親指をつっこんで、背中を丸めてトボトボと歩いて行った。ワインレッドのベッチンの上着は、汗と泥に塗れて茶褐色に変色していた。Tシャツの胸にはミックジャガーが髪を振り乱し大きな唇で叫び、バスケットシューズの踵はふんず蹴られてぺしゃんこだった。そんな出で立ちとは裏腹に、きれいにリンスされ軽くパーマのあたった長い髪が肩を覆っていた。胸ポケットから取り出したショートホープを咥えて、これまた不相応なジッポのライターを取り出し、煙たそうに眼を細め両手の中で火を点けた。細かく左右に揺するような歩き方で、坂道を登ってゆく君を、僕は幻のように見つめていた。
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