蝶 藻の匂の満ちた風の中に蝶が一羽ひらめいていた。彼はほんの一瞬間、乾いた彼の脣の上へこの蝶の翅の触れるのを感じた。が、彼の脣の上へいつか擦って行った翅の粉だけは数年後にもまだきらめいていた。 (芥川龍之介 「或る阿呆の一生」) \120の文庫本。どこの誰から戴いたものだったか?各頁の三辺は黄色く変色し、字体も現代のものよりは小さく読み辛い。しかし、内容は鮮明すぎるくらい烈しい。昭和43年・・・僕は18才〜はるか次元のかけ離れた憂鬱の中にいた・・・。
(Update : 2010/04/16)