わたなべあきおWeb

白い吐息

冷たい雨の早朝

ガレージ横に置いてあるカラス避けのネットの上に

白い猫が寒そうにうずくまっていた

センサーライトに照らされたその猫は

野良にしては、まだ毛並みがいい


新顔さんかい?

主を失ったのかい?

近づくと・・・

驚いた表情で車の下にもぐりこんだ

優しい・・・悲しそうな目をしていた


自分の心と重ね合わせた

何の理由かは分らないけど

置かれた現状が不憫だ

これから厳しい冬を迎えるというのに

でも・・・僕は飼ってはあげられないんだ


時代のもたらす黒い影が

白い小さな生き物を

どこかへ覆い隠してしまうように思えた

強者も弱者もない

みんな同じ生き物じゃないか

どこへもぶつけようのない怒りにも似た感情が

こみあげては・・・白い吐息となって雨に消えた

(Update : 2009/11/17)