遠雷戯画
閉じていた瞼 チカリ! 例の 前知らせをすることはしたさ
いくら待っても なかなかやっては来ずに
二息も三息ものあと どろん どろん どうん
そのとき こちらは どうだったか
うつら うつらに テレビのつけっぱなし 気づいて止めに立ったら 眠りの精に突き放されて
わびしいどころか ただっ広い 殺風景きわまる鉄筋校舎の 宿直の闇の中で
とり抑えても とり抑えても 湧いてくる 不燃焼想念に辟易していたのだ
ぶるぶる ぴりぴり 大きな屁っこを こきやがったな
往生際のわるい 切れ味のわるい 大砲ぶっぱなして すっ飛んでいった
once more
鉄筋の中の ばか高い 宿直の 真夜中に ばか広い 磨り硝子を 突きさし
昼間の疲れに 伸びている 日ごろ なまごろしにしている チミモウリョウどもの 応戦にうんざりしている 瞼を突きさし
そこまでは いつものように威勢はよかったのだが
さて いよいよの本番と まてどくらせど
二息も 三息も 四息も
音響効果だけは うんと奮発した共鳴で 夜空を たったひとり 駆けちらして
どこかへ 逃げさった 雷だったさ
(渡部 一夫)
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