わたなべあきおWeb

遠雷戯画

photo閉じていた瞼
チカリ!
例の
前知らせをすることはしたさ

いくら待っても
なかなかやっては来ずに

二息も三息ものあと
どろん どろん どうん


そのとき こちらは どうだったか


うつら うつらに
テレビのつけっぱなし
気づいて止めに立ったら
眠りの精に突き放されて

わびしいどころか
ただっ広い
殺風景きわまる鉄筋校舎の
宿直の闇の中で

とり抑えても
とり抑えても
湧いてくる
不燃焼想念に辟易していたのだ

ぶるぶる ぴりぴり
大きな屁っこを
こきやがったな

往生際のわるい
切れ味のわるい
大砲ぶっぱなして
すっ飛んでいった


once more

鉄筋の中の
ばか高い 宿直の 真夜中に
ばか広い 磨り硝子を 突きさし

昼間の疲れに 伸びている
日ごろ なまごろしにしている
チミモウリョウどもの
応戦にうんざりしている
瞼を突きさし

そこまでは
いつものように威勢はよかったのだが


さて
いよいよの本番と
まてどくらせど

二息も 三息も 四息も

音響効果だけは
うんと奮発した共鳴で
夜空を たったひとり
駆けちらして

どこかへ
逃げさった
雷だったさ

      (渡部 一夫)

(Update : 2009/07/06)