背景の記憶(45)
今日は小学校の入学式のようで、青空の下・・・桜の咲き誇るなかを、着物姿のお母さんに連れられて、ピカピカの一年生が少し不安そうな顔で歩いてゆく。
はるか昔・・・
僕の入学式はどうだったのだろうか?
継母は来てくれたのだろうか?
全く記憶に残っていない。
以後、授業参観も運動会も学芸会も卒業式も・・・
それが当たり前と諦めていたのかも知れない。
自分一人なら寂しかったのかもしれないが、大方の家庭環境が
そうだったのだろう。
でも・・・よく考えてみれば、内職をしてたわけでもなく、働き
に出てたわけでもないのだが・・・。
手を繋ぐこと
心配げに見つめられること
必死に応援されること
感激の涙を流されること・・・
そういう普通の行為や心の通い合いと無縁だった自分は、知らず
知らずのうちに、心中に深く暗い穴を作ってしまっていたのかも
知れない。
その穴を、大人になって探索してみれば・・・
たしかにゴツゴツとした壁肌ではあっても、底流に流れる清く
優しい水の流れを発見できたことが、最大の喜びであり、また
最大の支えでもあるのです。
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