背景の記憶(38)
二十歳のころ
六畳一間の安アパート
風邪のため、バイトを休んで寝袋で犬のように眠っていた。
突然、地震!
びっくりして飛び起きた。
玄関側からは二階、裏から見ると三階という建物。
ヒョロッとしているから、揺れには弱い。
しかし何か変だ。
・・・・・・・・・・
しばらくして、また揺れた。
揺り戻しか?
・・・と思いきや
隣の部屋から声がする。
声と揺れが微妙にかみ合っている。
なるほど・・・
そういうことか・・・
あくる朝
隣の女は、鼻歌を歌いながら洗濯をしていた。
向田邦子の「隣りの女」を読みながら思い出した。
晩生の僕には、刺激的すぎる出来事だった。
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