お疲れ様
幕が下りた
アンコールの拍手は鳴りやまず
観客は総立ちとなった
やがて再び幕が上がり
出演者が手をつないで舞台に現れた
僕は、ひたすら・・・
端っこの女優を見ていた
出番も台詞も少ない彼女だった
はるか遠い距離だったのに
眼と眼が合ったような気がした
僕は思わず
廻りとは違う〜敬礼のようなサインを送った
すると
彼女から同じサインが送り返されてきた
僕は<お疲れさま>の意味を込めて
両手を頭上で数回交叉させて着席した
彼女は
つい三日前、母親を見送ったばかりだった
劇と現実の交叉点
いや
劇中に現実をかぶせていたのかもしれない
そんな存在感に溢れた彼女の舞台だった
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