背景の記憶(27)
世はヒッピー時代、長い髪にジーパン姿。両手の親指を前ポケットに突っ込んで、うつむき加減に歩いた。
親に反抗して、世間に拗ねて、体制に背を向けて・・・。
僕は、根っからの・・・というわけではなかったが、色に染まった形で、彼らの輪の中にいた。
バイト先でも、現役の大学生たちとは一線を画し、何かしら影を背負った者たちが、自然に集まってきた。
大半が寝袋ひとつという感じで、定住の場所もなく、誰かの部屋を転々としていた。僕は、叔母の家の物置小屋に寝泊まりしていたのだが、M君、S君と順番に転がり込んできた。
それぞれが心酔する作者の本を持っていて、そこからの会話には際限がなかった。飲み明かし・・・語り明かし・・・気がつけば夜明けという日がほとんどだった。
詩人もいれば、作家の卵やピアニストまがい?もいて、まさに十人十色の集団となっていった。
僕に対する評価は、恐ろしいほど一定かつ均一化されたものだった。要するに超平凡〜もっとも世間に近い男〜だった。どうせ時が来れば、スーツにネクタイだろうと思われていた。
しかし、彼らの目は間違っていたけれど、それに敢えて反論する気にはならなかった。まだまだ・・・世の中を上から見下してしまうという〜マインドコントロールから抜け出せていなかったのである。
逆に対極に身を置いて、世の中を見定めたかったのかもしれない。一種のショック療法か?そうでもしないかぎり、僕の精神構造は再構築できないほどに歪みきっていたと言っていい。
それも、今思えば・・・の話であって、当時の自分にそれほど明確な意思があったわけではない。あれば、良い意味でも悪い意味でも、こんな自分にはなっていなかったわけで・・・。
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