わたなべあきおWeb

背景の記憶(25)

八月六日〜原爆忌

二十歳の夏

平和公園横の安アパート

僕は、灼熱の太陽を避けて、部屋に横たわっていた

祈りの鐘の音を聞きながら・・・

「平和の灯」を願って、数百キロ行進したのは、前年の夏

あのエネルギーはどこへ消えてしまったのだろう?

電車にもバスにも乗らず、いや、乗れず

ひたすら歩いた・・・

訪問する家々の大方は冷ややかだった

掲げる理想

砕かれる現実

闘う二人の自分

双方がダウンして、タタミマットに沈んでいた

夢遊病者のような意識の中で

僕は・・・

立ち上がり、足を引きずり、暗闇の向こうへ進もうとする

もう一人の自分を見ていた

泥を掴んで擦りつけ

一気に水で流し去り

素っ裸のからだに

白でなく、敢えて真っ黒のシャツを着た

暗闇の彼方に、口笛が聞こえる

この道は、いつの日にか

希望につながる

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(Update : 2008/08/06)