帰郷
叔父の四十九日の法要で帰郷した。
蒜山の山々には、まだ雪が残り、青空にそそり立つ大山も真っ白に尖っていた。
高速道路の最高地点付近の気温は三度。窓を開ければやはり冷たい空気が顔を刺す。
時間通りに到着したが、車を降りると既に寺の境内には読経の声が聞こえてきた。
焼香を済ませ、墓地に廻り納骨の儀式。
宍道湖畔のホテルで直会。(仏式でもこう呼ぶのだろうか?)
ほとんどが親戚縁者なのだが、高齢(95歳)の父には名前も顔も判別のつかない人が幾人もいる。その場では「あ〜・・・」とか「やれ・・・」とか言っているが、後ですぐ「ありゃ〜誰かい?」と聞いてくる。無理もない・・・何度でも繰り返し教え直す。
約束していて来なかった親戚に預かり物を届ける。11時を1時と間違えたらしい。父ならともかく・・・返す言葉なし。
実家の玄関を入った所の壁に一枚の貼り紙あり。
「少車多歩」
なるほど父らしい言葉。長年〜有言実行の人だ。長寿の秘訣は此処にあり!だろう。膝痛の我が脚をさすりながら肝に銘ず。
炬燵にあたりながら、父が何とはなしに話を展開する。同じ話題が何度も出てくる。嫁、孫、曾孫・・・名前が混乱して出てくる。老いるとはこういう事なんだろうな・・・。相槌を打ちながら、しんみりとした気持ちになる。
いつの間にか・・・こっちの方が先にそのまま寝込んでしまった。高校時代の教室での出来事が、リアルな夢となって出てきた。想い出したくない心の傷痕。何十年を経ても癒えてはいないようだ。挫折と辱めと逃避。
その地にはその地の霊界が、ずっと存するのだろうか?
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