背景の記憶(23)
母が亡くなって、父は本土(松江)に出ることを決意した。三歳を過ぎたくらいの僕に、詳しい経緯は知る由もないが・・・。
ぼんやりとした記憶では、取り敢えず北松江の母の実家へ入居した(・・・ようだ)。
父の赴任先は長江小学校で、一畑電鉄で北松江から数駅先の村にあった(・・・ようだ)。
ある日の朝、僕は父の後を追って泣きながら走った(・・・ようだ)。どうしようもなくて、父は僕を連れて出勤することになってしまった(・・・ようだ)。
学校の職員室で、窓際の椅子に腰掛けている〜そんな記憶が、今でもぼんやりと脳裡に残っている。
何十年も経って、京都である書展が開かれた時、その頃京都に来ていた父と会場へ行った。すると其処には、あの長江小学校に勤めておられた田中先生の顔があった。
成長した?僕の顔を見ながら、先生は笑いながら・・・この話を始められた。
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