わたなべあきおWeb

呼びつけ

ひとつの命が、この世から消えました

96歳の老婆

しかし、その死顔は娘のような艶がありました

斎場に、僕はひとり居た

無声映画のように

廻りのざわめきは、僕の耳には届かなかった

骨上げの時

係員のマニュアル化され尽くした説明は

何故か、僕には新鮮に聞こえた

若干二十歳の世間知らずの僕が

罵る如くに批判した

そのあげくが、このざまじゃないか!

今も同じ言葉を投げつけたいさ

でも・・・

その顔を前にしたら、言葉を失う

もういいさ

ゆっくりやすみなさい

あなたの最期に、送るひと僕一人では寂しいですか?

むしろ僕一人で嬉しいですか?

「華道、茶道の師匠が、こんな生き方でいいのかよ?」

生意気でしたね

でもね

僕は思うんだ

雑草やがらくたの中に咲く、一輪の華の鮮やかさを・・・

そんな「美」もあるのかな?・・・と

だらしなさの中の清楚

でたらめの中の秩序

最期まで貫き通してよかったさ

40年の時を経て

この僕を呼びつけたのだから・・・

(Update : 2007/11/02)