背景の記憶(17)
秘かに願書を取り寄せ、大学入試にチャレンジした。当然ながら・・・外国語系。
語学そのものはOKとしても、落とし穴とも言えるものが「小論文」であった。<***について、あなたの意見を>的な設問だったと思う。
いざ書き出そうとして、僕は何も書けなくなってしまった。いや、書こうと思えば書けたのだが、出てくる言葉の思想的ベースが、自分でもビックリするくらい、思春期に過ごした集団生活でたたき込まれた思想そのものであっったのだ。
後に流行言葉となった<マインドコントロール>っていう厄介なヤツだ。上から世間を見下ろしている・・・一般の世間の人達を愚人として捉えている・・・。
まったく別人と思えるような、もう一人の自分がエンピツを走らせる。真っ当なはずの自分は、何もすることができない。意に反して〜と言うより、自分の意見がまったく溢れ出てこない。
設問内容とは大きくかけ離れた〜大演説(?)が書き上げられて行く。字数もはるかにオーバーして、余白にはみ出して行く。
本当の(もう一人の)僕は、夢遊病者のように試験会場を後にした。
これではダメだ!
意図的に世間に丸裸で飛び込むしかない!
そうでもしないと・・・この鎧は振り払えそうにない。
僕にしては〜壮絶な闘いが始まった・・・二十歳の春。
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