お見舞い
久し振りに入った病院は、まるで戦場のようだった
白衣の兵士は言葉数も少なく、忙しく動き回っていた
彼らとは対照的に、壁側の長椅子には
ひどく落ち込んだ傷痍兵たちが、俯いて座っていた
掻き分けるように目的の部屋へと向った
独特の臭いの淀んだ空気が、足取りを重くした
入口に名前を見つけ、一歩入った時
部屋中の視線が僕に突き刺さった
頼りない作り笑顔で、それらを切断しながら
僕は彼女の前に立った
両の眼は明らかに怯えているように受けて取れた
僕に出来ることは何?
一瞬の本物の笑顔で・・・
「大丈夫さ!」を表現した
安心と一つの決心めいたものが、彼女の目に現れた
差し出した花包みの色と香りが、ちょっとだけ部屋を和ませた
僕は・・・逆の立場の時
どんな顔をしていられるだろうか?
・・・・・・・・・・・・・・・
小一時間も居たかに感じられた数分間の後
僕はまた本物の笑顔と強く親指を突き出して、病室を後にした
わざと大股でゆっくりと長い廊下を歩いた
焼け野原の残骸や死体に転ばないように・・・
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