いいなぁ〜おじさん
先日特別養護老人ホームに、叔父を見舞った際、笑えない場面に出合った。館内には、入所者と家族とが一緒に過ごせる部屋があり、そこで昼食を共にする予約をとっておいたのだった。
到着すると、叔父さんは入浴中ということで、しばらく待つことになった。僕がトイレに行って部屋に戻ると、見慣れない男の人が椅子に座って話していた。僕は一瞬、わが目を疑った・・・「えっ?おじさん?・・・こんなに変わちゃったの?」
その男の人は「いいなぁ〜!いいなぁ〜」を連発していた。僕が不思議そうに叔母さんに目配せすると、叔母さんは笑いながら「ああ、いいなぁ〜おじさんだけん・・・ここでは有名だが・・」と答えた。
よく聞くと、カラダは健康だけれども、息子さんたちは皆遠方で世話ができなくて、結局この施設へ入れたということらしい。滅多に面会にもこない家族・・・。寂しいのだろう〜誰彼となく来訪者には笑って近づき「いいなぁ〜」を連発するらしかった。
なんとも笑えない話ではないか。費用が十数万円であっても入所を待つ人は順番待ちで、2〜3年先のことらしい。現実家での介護は大変で、叔父も家の中で転倒して骨折を何回かしている。しかし、一方でそうした邪魔者扱い的なひともいるんだな〜と、気の重くなるのを覚えた。
同じ館内のもう一人の親戚の人を捜しに行ったとき、広い食堂の数十人の人たちに、一斉に僕の方を見つめられたのには驚いた。言葉こそ発しないけれども、みんな「うちの子が・・・」と思ったのではないかと想像した。そして同じように「いいなぁ〜」と心で叫んだのではないかと・・・。
お盆が過ぎたけれども、あの世の亡き先祖方も、同じ想いではなかろうかと考えた。<亡霊 弔いを待つ>
名を呼び、そこにいるかの如くに語りかけ、安らかなれと回向する。生きてる親にも、亡き親にも、随分と自分は不孝者だなと心で詫びた。
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