わたなべあきおWeb

氷柱

日本海に面した町は雪に埋もれていた。家々の屋根の上の雪は1メートル近くにもなっていた。

家の前や歩道の雪掻きをしている人たちの顔には、明らかに疲労の色が滲んでいた。

町とは不釣り合いなくらい大きなシティホールで、葬儀は行われた。そしてこれまたその広さとは不釣り合いなくらい、参列者の数は寂しいものだった。

生前、不仲を噂された人が仰々しい弔辞を読み上げていた。冥福を祈ると言うよりは、単なるデモンストレーションのように聞こえた。

面識があるにもかかわらず挨拶もなく、目上の人を差し置いて上座に堂々と腰掛けていた。厚顔ここに極まれり・・・の感。

山へ向うマイクロバスから見る家の軒先には、怖いくらい長く太い氷柱が垂れ下がっていた。

氷柱は何を物語る・・・?

死者の無念か?

でも・・・ご安心ください。

私がご遺志を受け継ぎましょう。

(Update : 2005/12/24)