氷柱
日本海に面した町は雪に埋もれていた。家々の屋根の上の雪は1メートル近くにもなっていた。
家の前や歩道の雪掻きをしている人たちの顔には、明らかに疲労の色が滲んでいた。
町とは不釣り合いなくらい大きなシティホールで、葬儀は行われた。そしてこれまたその広さとは不釣り合いなくらい、参列者の数は寂しいものだった。
生前、不仲を噂された人が仰々しい弔辞を読み上げていた。冥福を祈ると言うよりは、単なるデモンストレーションのように聞こえた。
面識があるにもかかわらず挨拶もなく、目上の人を差し置いて上座に堂々と腰掛けていた。厚顔ここに極まれり・・・の感。
山へ向うマイクロバスから見る家の軒先には、怖いくらい長く太い氷柱が垂れ下がっていた。
氷柱は何を物語る・・・?
死者の無念か?
でも・・・ご安心ください。
私がご遺志を受け継ぎましょう。
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