少年のこころ
どこにも自分の縋りどころのないことが、むしろ自分を快活に振る舞わせ、殊更に笑顔を作らせた。
縋りどころのないことを思い知らされる方へ、落ちて行くまいとする必死の努力が、横道へ逸れない、ぐれない、と言う形で表われ、前へ前へとむしろ踏み出させていった。
言いようのない寂寞感を、他人に見透かされるのが嫌で堪らなかった。・・とは言っても、所詮は子供の演技・・見る人が見れば心の中は丸見えだったに違いない。
まわりの顔色を伺うと言うほどではないにしろ、常に身のまわりの空気を意識し、危険?と想われる事は敏感に察知する能力が備わっていった。そして子供の自分にはどうしようもないことだと知ったとき、大人から見ればびっくりするような大胆な行動をとる自分がいた。表面の異常さとは裏腹に、自分の心の中はいつも冷静沈着だった。
それは自分の持つ二面性・・と言うよりは、揺れ動き、彷徨い悩む少年の、必死のバランス感覚だったに違いない。
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